この記事でわかること
・症状別の原因チェック
・Excelの標準機能での修復手順
・Windows/Macそれぞれの復旧ルート
・どうしても開かないときの“最後の手段”
・再発防止の設定
まずは症状を切り分ける(1分)
- A. エラーが出て開けない
例:「ファイル形式またはファイル拡張子が正しくありません」「壊れている可能性があります」 - B. クルクル回って固まる/応答なしになる
- C. 開くが文字化け/数式が壊れている
- D. クラウド(OneDrive/SharePoint)でだけ開けない
→ 以降の手順は上から順に試せばOK。時間がない場合は「10分で試す最短ルート」へ。
10分で試す最短ルート(失敗しても元データは残る)
- [開いて修復]で開く
Excelを起動 →[ファイル]→[開く]→[参照]→問題のファイルを選択
→[開く]ボタン右の▼→[開いて修復]→[修復](ダメなら**[データの抽出]**) - アドイン無効で起動(セーフ起動)
- Windows:Win+R →
excel /safe
→ もう一度ファイルを開く - (開けたら)[ファイル]→[オプション]→[アドイン]→下部「管理:COM アドイン」→[設定]→全て外して再起動
- Windows:Win+R →
- バージョン履歴から復元(クラウド保存の場合)
ファイルを右クリック→[バージョン履歴]→過去の版を開いて保存 - 拡張子の整合性を直す
エクスプローラーでファイルを右クリック→**[プロパティ]→[全般]→[ブロックの解除]**にチェック(表示される場合)
拡張子が.xlsx
/.xls
/.xlsb
で正しいか確認(誤っていれば正しい拡張子にリネーム)
標準機能での修復(詳しい手順)
1) 「開いて修復」+「データの抽出」
- [ファイル]→[開く]→[参照]
- 対象ファイルを選択 →[開く]右の▼→[開いて修復]
- [修復] → 失敗したらもう一度実行し [データの抽出](数式は失われても値が救えることが多い)
補足:リンク・数式・ピボットは一部再作成が必要になる場合があります。
2) セーフ起動&アドインの切り分け(Windows)
- セーフ起動:Win+R →
excel /safe
→ Enter
これで開けるなら、アドインや描画周りが犯人。 - アドイン無効化:
[ファイル]→[オプション]→[アドイン]→下部「管理:COM アドイン」→[設定]→全オフ→Excel再起動→問題のファイルを開く - ハードウェア グラフィックアクセラレータを無効化:
[ファイル]→[オプション]→[詳細設定]→[表示]→**「ハードウェア グラフィック アクセラレータを無効にする」**にチェック
Macでアドイン切り分け:Excelを通常起動→メニュー[ツール]→[Excelアドイン]で一旦すべて外す。
起動時読み込み(XLSTART)を止めるには、~/Library/Group Containers/UBF8T346G9.Office/User Content/Startup/Excel
を一時的に別名フォルダへ退避。
※Mac版はCOMアドインの仕組みが異なり、同名項目が無い場合あり。
3) 自動回復から取り戻す(保存前でもチャンスあり)
- クラッシュ後に表示される「ドキュメント回復」ウィンドウ:最新に近い自動回復コピーが並ぶ → 開いて別名保存
- 保存していないブックを回収:
[ファイル]→[情報]→[ブックの管理]→[保存されていないブックの回復] - フォルダから直接探す(Windows)
エクスプローラーのアドレスバーに貼り付け"%LOCALAPPDATA%\Microsoft\Office\UnsavedFiles"
(未保存の一時ファイル)"%APPDATA%\Microsoft\Excel"
(自動回復関連)
中にあるファイル(多くは .xlsb など)をExcelで開いて別名保存
- フォルダから直接探す(Mac)
Finder →[移動]→[フォルダへ移動]で入力~/Library/Containers/com.microsoft.Excel/Data/Library/Preferences/AutoRecover
~/Library/Application Support/Microsoft/Office/Office AutoRecovery
見つかったら開いて別名保存
※バージョンにより場所が多少異なる場合あり。
4) クラウドのバージョン履歴(OneDrive/SharePoint/Teams)
- エクスプローラー/OneDriveアプリでファイルを右クリック→[バージョン履歴]
- ブラウザでも、SharePoint/OneDriveのファイル詳細 → Version history → 任意の版を復元またはコピーとして開く
共同編集中の競合やネットワーク断で壊れた場合でも、直前の安定版に戻せます。
5) 拡張子・ダウンロード保護・パス問題を解消
- 拡張子の整合性:
メール添付やNAS経由で.xlsx
が.xls
になっている等で開けないことあり → 正しい拡張子へリネーム - インターネットから入手したファイルのブロック(Windows):
右クリック→[プロパティ]→[セキュリティ:ブロックの解除]→[OK] - パスが長すぎる問題:
ファイル名+フォルダ階層が長すぎると失敗 →C:\Temp
など浅い場所へ移動して開く
6) 別の読み込み経路で“中身だけ”救う
- 新規ブックに取り込み:
[データ]→[データの取得]→[ファイルから]→[ブックから](Power Query)→必要なシートを読み込み
→ 値だけなら救えるケースが多い - ZIPとして展開(.xlsx/.xlsmのみ):
ファイルの拡張子を.zip
に変更→解凍→xl/worksheets/
配下のsheet1.xml
等からテキストを救出(最終手段)
7) Office自体の修復(Windows)
- [設定]→[アプリ]→[インストール済みアプリ]→Microsoft 365/Office→[変更]→クイック修復→改善が無ければオンライン修復
どうしても開かないときの“最後の手段”
- 別PC/別バージョンのExcelで開く(互換性の差で開けることあり)
- Googleスプレッドシートにインポート → 値と一部の書式だけでも回収
- バックアップ拡張子を探す:
.xlk
があればそれが自動バックアップ - 専門ツールは最終選択:プレビュー可能なものを選び、コピー上で試す(元ファイルは触らない)
よくある原因と対処の対応表
症状 | ありがちな原因 | 効く対処(優先順) |
---|---|---|
形式が正しくないと表示 | 拡張子の不一致/ダウンロード不完全 | [開いて修復]→拡張子確認→ブロック解除 |
開くとクラッシュ | アドイン・グラフィック周り | excel /safe → アドイン無効 → グラフィック無効 |
共有中だけ壊れる | 同時編集の競合/同期エラー | バージョン履歴から復元/ローカルにコピーして開く |
中身が文字化け | 破損/外部参照の崩れ | [データの取得]で値取り出し/ZIP展開で救出 |
そもそも見つからない | 自動保存のみで終了 | 「保存されていないブックの回復」/UnsavedFiles フォルダ |
作業時の注意(失敗しないコツ)
- 元ファイルは触らず必ずコピーで作業(右クリック→コピー→別名に)
- 同じファイルに対して修復を連打しすぎない(稀に悪化)
- NAS/USB直開きは避け、ローカルへコピーしてから開く
- 大容量ファイルは十分な空き容量(一時展開に数GB必要なことも)
再発防止の設定(5分)
- 自動回復の間隔を短く
[ファイル]→[オプション]→[保存]→**「次の間隔で自動回復用データを保存」**を5分程度に - 自動保存(AutoSave)をオン(Microsoft 365)
OneDrive/SharePoint上のファイルは上部トグルをオンに - 常にバックアップを作成(必要な重要ファイル)
[名前を付けて保存]→[その他のオプション]→[ツール]→[全般オプション]→「常にバックアップを作成する」
※.xlk
が毎回生成されます - アドインは最小限・定期見直し
- ファイルパスやファイル名を短く保つ(共有フォルダ運用時はルール化)
スクリーンショットの入れどころ(制作メモ)
- [開く]ボタンの**▼→[開いて修復]**のプルダウン
- ブックの管理 → 保存されていないブックの回復 の位置
- アドイン画面(管理:COM アドイン)
- バージョン履歴のポップアップ(OneDrive)
- Windowsのプロパティ→ブロックの解除チェック位置
FAQ
Q1. 「データの抽出」を使うと何が戻りますか?
A. ほとんどは値と一部の書式です。数式・ピボット・グラフは再作成が必要な場合があります。
Q2. 自動回復フォルダに何も無いのですが?
A. 自動回復がオフ/間隔が長い/Excelの正常終了で破棄、などが考えられます。以後は[保存]設定で間隔を短くし、AutoSaveの利用を検討してください。
Q3. 共有ブックでだけ壊れます。
A. 同時編集の競合やローカル同期ミスが原因のことがあります。バージョン履歴で安定版を復元し、以後はシート単位での編集ルールや重い処理(大量計算・VBA)の時間帯分離を。
Q4. 修復後、式が全部値になってしまいました。
A. 修復の副作用です。元ファイルのバックアップ(.xlk やバージョン履歴)から式のある版を開き、式だけ貼り戻すのが現実的です。
Q5. 会社PCでだけ開けません。
A. セキュリティ設定・DLP・ウイルス対策のスキャンが影響することがあります。ローカルにコピーしてテストし、それでも不可なら情シスにイベントログと合わせて相談を。
まとめ
- まずは [開いて修復]→[修復/データの抽出]。
- ダメなら セーフ起動→アドイン切り分け と バージョン履歴。
- 自動回復/UnsavedFiles と 拡張子・ブロック解除・短いパス を確認。
- 最後は Power Query取り込み や ZIP展開でテキスト救出。
- 復旧できたら 自動保存&バックアップ を必ず設定。